不器用なシタゴコロ

聞き慣れない音楽は確かにこのケータイから発されていた。

鳴り響く音楽は大きくはないけれど。

決して小さくもない。





…周りの視線が痛い…。

早く、鳴り止まないかな…。





なるべく音が小さくなるように。

ハンカチに包んでギュッと握った。





「…出ちゃえば?」





…はい…?

今、なんと?

今「出ちゃえば?」って聞こえたんだけど…?

沙保の思いもしなかった言葉に。

私は目を見開いた。

そんな私を見て、沙保は言葉を続けた。





「そのケータイの持ち主を知ってる人なワケじゃん?理由話して本人に連絡してもらえばいいんだよ」





…あ、そうか…。

その方が早いかも知れない。

ケータイ探してるだろうし。





私は。

ケータイを包んだハンカチを開く。

すると。

音がさっきより大きく聞こえるようになった。





「柚」





早く出なよ、と言わんばかりの沙保の顔。

私は“コクン”と頷くと。

ケータイを開いた。



 

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