不器用なシタゴコロ

「…とりあえず行こう」

「へっ?!」

「せっかく来たんだし、楽しもうよ」





顔を背けていたとーやクンが。

車のエンジンを切り、運転席のドアを開けた。





…途端。

モワッとした熱い空気が涼しかった車内に流れこんでくる。





「ゆずサン、行こ?」





いつの間にまわってきたのか。

とーやクンは助手席のドアを開けると、私に柔らかく微笑んだ。





…とーやクンのこの柔らかい微笑みに抗うこともできず。

まだ恥ずかしさを残した顔は少し背けながら。

車を降りた。







「…暑いねぇ」

「ホント。俺、夏キライじゃないんだけど。
日焼けすると赤くなるんだよなぁ」

「今日も日焼けしちゃいそうだね」

「んー…、室内だからヘーキじゃない?」

「室内?…って、あっ!!」





駐車場を抜けて歩いていった先に見えたのは。

大きな水族館のあるテーマパークだった。



 

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