光輪学院シリーズ・神無月の憂鬱
白い髪をきつく頭の上で束ね、メガネをかけている神無月の祖母は、今では力が弱まってしまったが、かつての<言霊>使いだった。

神無月の血筋は代々<言霊>使いが多く生まれる。

それゆえに神社が建ち、神無月の血筋の者は神社を継ぐ立場となる。

しかし現代ではほとんど強い<言霊>使いは生まれず、この神社でも能力者は祖母と神無月の二人だけになってしまっている。

祖母はそれでも、習字という手段で<言霊>の力を発揮する術を見つけた。

おかげで祖母の習字教室は子供から大人まで、多くの人間が学びに来る。

そんな祖母もかつては光輪学院の卒業生。

そして封話部の<言霊>使いとして、かの封印にも携わった。

封印には<言霊>使いが必要―。

そう学院の理事長から言われ、代々子孫達は光輪学院に入学しているのだ。

神無月自身も逃れられず、入学させられた身だった。

「理事長と部員達の仲が悪くってね。榊部長がちょっと可哀そう」

「今の理事長はあまり強く能力を引き継がなかったみたいだしね」

「お婆と理事長、同級生だっけ?」

「ええ。そして同じ封話部で、理事長は当時の封話部の部長だったわ。封印を何とかしようと、必死だったわね」

そう語る祖母の眼が、苦しそうに歪む。

半世紀以上も代々の部長が苦しんでいることを、神無月は祖母から教えられていた。

榊も表面上は明るく振る舞っているが、陰では封印のことを何とかしようと必死になっていることを、神無月は薄々気付いていた。

だから部活には喜んで参加はできないものの、渋々ながら付き合っているのだ。

「封じられているモノも、浄化するまで時間がかかるしね。一つが浄化しても、また新たな封じるモノができてしまう。あの土地の力の作用は、恐ろしいの一言に尽きるわね」

「創立120年だもんね。その間、ずっとこうなんだ…」
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