この隙間、僕の存在。
体育館に入ると、先ほどまで微かに聞こえていた声たちが、一気に現実味の増す声になった。

「やっぱ懐かしい」
たった少しの時間、離れただけなんだけど。

「すげーな! アイツの動きすげーキレイだ!」
隣で樹裕がはしゃぐ。

「すげーだろ? この学校のバスケ部はかなりハードな練習こなしてきたしな、当然なんだよ」

ちょっと前まで一緒にバスケやっていた仲間があんなふうに褒められるもんだからつい俺は嬉しくて自慢げに話してしまった。

「すげーな。俺、バスケ才能ないからすげー羨ましい!」
「…っ、そうだろ……?」
「ん? どうかしたか?」
「いや、別に……。つかおまえさ、すげえ天然だよな……」
「は? なんでだよー」

あんなふうに言ったら絶対毒づいてくるかと思った。
それなのに素直に感想言ってくるもんだから。
なんだかこっちが恥ずかしくなってしまう。



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