1970年の亡霊
 変電施設が爆破された事から、原子力発電所が狙われているという流言が伝わり、市民達に恐怖心を植え付けた。

 交通機関も規制され、物流は完全にストップした状態になってしまった。

 爆破テロの影響は、経済界にも及んだ。株価が一気に下落し、この事からも不安感が募ったである。

 その翌日、新たな爆破テロが起こされた。

 今度の標的は、東京拘置所及び、関東各県の刑務所であった。

 塀や正門が数ヶ所に渡って爆破され、収容されていた受刑者や未決囚の一部が、混乱に紛れて脱走。周辺各地で強盗、強奪等の凶悪事件が発生した。

 こういった事以外にも、混乱に乗じた一般人達が暴徒と化し、集団での略奪や暴行傷害があちこちで引き起こされたのである。

 内閣は、治安維持法の発令を段階的に進めるという決定を下した。

 都内各所で起きている暴徒鎮圧に手一杯の警察を助けるべく、自衛隊の出動を認めたのである。

 この時点ではまだ災害出動の範囲でのもので、主に物資輸送と医療を行う程度に制限されていた。

 しかし、自衛隊に警察権行使の指示が出されるのは、時間の問題であった。


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