1970年の亡霊
 これは一体どういう事?

 二度、三度とキーボードを打ち直したが、結果は同じだった。

 川合俊子のコンピューターに、不正アクセスを行っていたのは警視庁内部の者?

 三山は、もう一つの個体番号を即座に解析し始めた。

 解析結果が出た時には、ブラインド越しに朝陽が差し込んでいた。

 そのアクセス先を地図で特定し、次に両方の個体番号同士でメール等の交換が無いかどうかを調べた。

 もうこの頃には、課員の全員が席に着いていた。

「三山警視、朝のミーティングを始めたいのですが」

「今朝は無し。みんな、昨日の続きをやっていて」

 取り付く島も無いといった感じで、その姿には鬼気迫るものが窺えた。

「うそ!?」

 思わず上げた三山の声に、課員の皆が振り向いた。

 何事かと視線を寄越す課員達を尻目に、三山は席を蹴るように立ち、部屋の奥へと走った。

 ショートカットの髪を振り乱し、物凄い形相で迫る三山の目には、怯えたような表情で固まったままの顔があった。

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