1970年の亡霊
「今回の任務は想像を絶する困難が待ち受けている事と思う。だが、我々は今日この日の為に一年365日、厳しい訓練を積んで来たのだ。各自の職務に忠実たれ!」

「はいっ!」

 深見隊長の言葉を受けて、出動準備を全て整えた隊員達は全身に闘志を漲らせた。つい先程まで緊張で青白い顔をしていた瀬尾巡査長も、今では紅潮させ使命感に燃えた目をしていた。

 SAT専用特殊車両へ分乗した彼等は、第六機動隊の警察車両の先導で一路足立へと向かった。

 他の機動隊も、何とか予定時刻までに現場周辺へ駆け付けようと、首都高をひたすら走った。

 この時三山は、複数のコンピューターをフル稼働させていた。

 数十キロ離れた地点からGPS画像を操作し、監視出来るだけのハイテク装置を備えた相手。しかも、こちらが探知したのを察知するや否や、取得したデータをハイスピードで消去させようとまでした。それだけではない。相手は同時にウイルスを仕掛けたのである。通常のセキュリティソフトならまず間違いなくウイルスにやられたであろう。

 外事課のセーフティーハウスに設置されていたコンピューターは、特殊なフィルタリング装置とソフトで守られていた。同じものを使っているのは、恐らくアメリカのCIAと国防総省位ではなかろうか。

 膨大なデータが全てのリンク先から集められ解析される。三山はそれらを掻き集め、少しでも多くの情報を得ようとしていた。

 彼女はコンピューターの一つを現場へ急行している捜査指揮車両のコンピューターと繋げ、随時現場と情報交換が出来るようにセットした。

 その車両に柏原と加藤が乗り込んでいる筈だ。回線が繋がり、ウエブカメラに映った加藤を彼女は心配げに見つめた。

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