1970年の亡霊
「よう」
「加藤さん……」
三山はいきなり現れた加藤を見て、急に泣き出しそうな顔をした。後になってその事を加藤に何度もからかわれた。
「あれから全然連絡をくれないし、ケータイは繋がらないし。加藤さんも冷たいですよね」
「あんたと捜査対象が別々になっちまったからな」
「それにしたって……」
三山が言葉を続けようとすると、加藤がズボンのポケットからハンカチに包んだ物を差し出した。
「え?」
「連絡したくても出来なかったんだよ」
ハンカチを広げると、そこにはバラバラになったケータイ電話があった。
「こいつと、一番上等な背広がおじゃんになっちまった……。足立で撃たれた時、こいつが胸のポケットに入っていた。あん時、あんたの写メ、撮っただろう」
「あ、私が一緒に現場へ行きたかったって言った時ですね……」
「ああ。で、そのまま胸のポケットに入れてたんだ。防弾ベストも着ていたから、こいつだけのお陰で命拾いしたってえ訳じゃねええが、その、何と無く……」
「何と無く?何ですか?」
「あんたに、護られた……ような、そんな感じがさ……最高のお守りになった」
加藤がそういう事を口にするには、かなり勇気を出しているんだろうな、と思い、三山は微笑ましくなった。
加藤は照れながら、新しいケータイ電話を出して、
「新しい、写真……撮っても、いいかな」
「どうして私の?」
三山は少し意地悪っぽい言い方をしてみた。
「これからもお守りが必要かなって……あ、嫌ならいいんだぜ」
「写真だけなんですか……本人じゃ、駄目なんですか……」
「よく聞こえなかったんだけど」
「そうですか、なら聞かなかった事にして下さい」
「俺でもいいのか?」
加藤の言葉は、はっきりと三山の耳に届いた。
「加藤さん……」
三山はいきなり現れた加藤を見て、急に泣き出しそうな顔をした。後になってその事を加藤に何度もからかわれた。
「あれから全然連絡をくれないし、ケータイは繋がらないし。加藤さんも冷たいですよね」
「あんたと捜査対象が別々になっちまったからな」
「それにしたって……」
三山が言葉を続けようとすると、加藤がズボンのポケットからハンカチに包んだ物を差し出した。
「え?」
「連絡したくても出来なかったんだよ」
ハンカチを広げると、そこにはバラバラになったケータイ電話があった。
「こいつと、一番上等な背広がおじゃんになっちまった……。足立で撃たれた時、こいつが胸のポケットに入っていた。あん時、あんたの写メ、撮っただろう」
「あ、私が一緒に現場へ行きたかったって言った時ですね……」
「ああ。で、そのまま胸のポケットに入れてたんだ。防弾ベストも着ていたから、こいつだけのお陰で命拾いしたってえ訳じゃねええが、その、何と無く……」
「何と無く?何ですか?」
「あんたに、護られた……ような、そんな感じがさ……最高のお守りになった」
加藤がそういう事を口にするには、かなり勇気を出しているんだろうな、と思い、三山は微笑ましくなった。
加藤は照れながら、新しいケータイ電話を出して、
「新しい、写真……撮っても、いいかな」
「どうして私の?」
三山は少し意地悪っぽい言い方をしてみた。
「これからもお守りが必要かなって……あ、嫌ならいいんだぜ」
「写真だけなんですか……本人じゃ、駄目なんですか……」
「よく聞こえなかったんだけど」
「そうですか、なら聞かなかった事にして下さい」
「俺でもいいのか?」
加藤の言葉は、はっきりと三山の耳に届いた。