1970年の亡霊
 岩場に足を取られないよう、男は慎重に登って行った。

 道などとはとても言えない山道は、何処もかしこも穴や岩だらけだった。

 先頭を歩くリーダーのアフマドが、男の方へ手を振った。

 視界が開けた途端、風が砂を運んで来た。

 頭から首に掛けて巻いていたターバンを鼻の上まで引き上げ、砂混じりの風を避けた。

「マコト」

 アフマドが男の名前を呼び、前方を指差した。

 指し示した先に、政府軍の基地があった。

 マコトと呼ばれた男は、背中に担いでいたRPG(ロケットランチャー)を下ろし、筒先にロケット弾を挿し込んだ。

 姿勢を低くし、彼は点在する岩を遮蔽物にしながら、目標に近付いた。

 照準に基地の中央部を入れ、彼はロケット弾を発射させた……。





           (了)

   2010/11/25 23:07 脱稿








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