1970年の亡霊
 その日の職務を終えた夜、男のケータイに一通のメールが入った。

 送信者の名前を見た瞬間、男は足を速めて地下鉄の入り口を目指した。

 改札を抜けるとホームには向かわず、一目散にトイレへ入った。

 そのまま大便所へ飛び込み、急いでメールの本文を開いた。

『ゴミの処分はこちらでします』

 そのように書かれた本文を確認すると、

『判りました。ゴミのチェックを続けます』

 と返信し、直ぐさま受信メールと一緒に削除した。

 男は、用は足さなかったが、念の為に水を流し、大きく深呼吸をしてからトイレを出た。


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