1970年の亡霊
 声を潜めるように話す二人の男がいた。

「事は進んでいるようだが……」

「全て予定通り…と言いたいところですが……」

「何か問題でも?」

「我々の存在に気付いた者が……」

「内部者かね?」

「それならば問題は無いのですが」

「一般人とも違うようだね。当局か?」

「はい……」

「協力者を配置していたのでは?」

「はい。実は、その協力者からの通報で判明した次第です」

「ならば、そう問題にする事もないだろう。協力者が上手く対処してくれるのではないかね?」

「そのように動いて頂いたようですが……」

「まだ心配しているようだな」

「はい……」

「構わん。思ったままを言いたまえ」

「蟻の一穴……我々の行動は、ある時点まで一切秘匿されていなければなりません。我々の存在に気付いた者が、協力者によって排除されるにしても、却ってその事から我々に繋がる道筋が露になってしまう恐れがあります。最終段階まで、まだまだ慎重にならなければと……」

「どうすればいい?」

「邪魔者の排除は我々が……」

「協力者では不安だと?」

「抹殺するのであれば、我々の方が少なくともプロです」

 年嵩の男が小さく頷き、

「判った。君に任せる」

 と言った。

 言われた男は軽く頭を下げ、部屋を出て行った。

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