―you―
 ぎりぎり間に合った打ち上げ会場。その場で次回作の配役が発表された。俺はやっぱり脇役だったけれど、それも仕方がない。監督は全てを考えて配役を決めているんだから。
 
 あなたに再び会ったのは、別れてから三時間後だった。
「なあ優、続きしようぜ?」
「まだ飲むつりなんですか?体に響きますよ、寺田さん。声も枯れるし」
「いいだろ一日くらい。一緒にタクシー乗れよ」
「結構です。俺、明日の早いバスで実家に帰るんですよ」
「乗れって言ってんだろ」

「みっともない。いい大人が」
 そう言って俺を寺田さんから引き離してくれた。何だよお前、と寺田さんは凄んだが、あなたの睨みにすくんだのか、一人タクシーに乗って帰った。
「あ、有り難うございました」
「そんなに有難い事じゃないよ」
「あの、十河さん」
「何で私の名前…あ」
 モーリス、とあなたと俺の声が重なった。
「暗いのと化粧してないので解らなかったよ。えっと…」
「天野優です」
「天野さん。打ち上げ終わったんだ」
「はい。今のは先輩役者で。ロバート役でした」
「ああ、あの爺さんね」
「十河さん、シテキナコトは解決したんですか?」
「…そう見える?」
「見えますね」
 そうか…とあなたは夜空を仰いだ。頭に当てた左手薬指に光るもの。
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