Broken†Doll
序章

プロローグ

「自由になりたい」

そう願わなかった日など、人形には存在しない。

勿論、その願いが叶う日も来るわけがなく、どうでも良いような毎日が、ただ過ぎて行く。

人形の見せる笑顔、優しさ、心、芸術は全て偽りにすぎず、《本物》は何処か遠くへ消え去ってしまっていた。

自由を願っても、望んでも手足に細い糸を繋がれた操り人形は、他人の思い通りにしか動くことができない。

逃げる事さえ忘れてしまった人形は、鎖に締め付けられているようだった。

泣き叫び、悲鳴をあげているのは心の中であって、固く閉じられた口からは、声にならない叫びと悲鳴が喉を削り、搾り出すような音が出る。

服従ではなく、奴隷のようだ。

苦しくて、手足が痛む。それでも人形は涙を流すことはできない。

《大切な物》を知らないから、失う怖さも知らない。

人形は他人のために嘘をつき、完璧な人形を演じるしかなかった。

心は、自由が欲しいという気持ちで満ち溢れており、自分の知らない外の世界に憧れを抱いていた。

人形はただの人形でしかない。でもきっと、いつか自由を手にする日が来るはず――――。
誰か、私の両手両足に結び付けられた糸を切って、私を自由にして―――‥‥‥‥。

人形はただそう願うしかなかった。
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