Impression~心の声

リセット

入力事項の中にハンドルネーム、という項目があった。ハンドルネーム?源氏名ってこと?私は少し迷った。だけどその果てに、私は唯一の友達、〝香織〟の名前を借りることにした。
 初めてのログインはさすがに緊張した。だけど自分の姿が画面に映った瞬間、なんだか少し昔の自分が戻ってきたような感覚に落ちた。カメラ越しのモニターに移る自分、ちょっと用途は違ったが見慣れた自分の姿だった。
そんなことを思いながら、画面に映る自分を眺めていると、ログイン開始から5分も経たないうちに、誰かが私にアクセスをしてきた。
圭斗 こんにちは、始めまして。
〝圭斗〟相手の名前がログ画面に表示された。 
 心の準備なんかしていなかった私は、少し焦ってしまった。
香織 こんにちは。
私は慣れない手つきでその文字を打ち込み、返事を返した。
圭斗 マイクは持ってる?
香織 はい。
圭斗 じゃぁマイクで話そうよ。
香織 使い方があまり解らなくて。
圭斗 画面の右端のマイクマークのところをクリックしてマイクとスピーカーをONにするだけだよ。
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