Impression~心の声

出会い。

しばらくすると、誰か私にログインをしてきた。
いさむ「こんばんは。始めまして」
 音のないログイン画面に文字が打ち込まれた。
香織 「こんばんは。遊びに来てくれてありがとう。」
 私はその言葉に、返事を打ち返した。
いさむ「何だか、元気の無い顔をしてるね。」
 すると続けて相手が文字を打ち込む。
 私はマイクをオンにした。
香織 「マイク使えますか?」
 私はマイクを使い自分の声で相手に語りかけた。
いさむ「ごめん持ってはいるんだけど、使い方が解らなくって。」
 画面には相手が打ち込んだ文字が入力された。
 私は〝いさむ〟にマイクの使い方を教えた。あの時自分が誰かに聞いたのと同じように。
香織 「話せる?」
いさむ「こんばんは、聞こえますか?」
 彼の声が私に届いた。
 軽い声だった。彼の声は透き通るような綺麗な声だった。
香織 「聞こえますよ。」
いさむ「どうしてそんなに悲しい顔をしているの?」
 顔を知らない声の主に私は一瞬心を開きそうになった。
香織 「悲しくなんかないよ・・・。」
いさむ「ごめんね、初めて話すのに。」
 彼の声は私の好きな声だった。
香織 「いいよ、私のことなんか気にしないで。」
 本当は大丈夫なんかじゃなかったのに。何時だって私は人を跳ね返そうとする。
香織 「チャットよくするの?」
 私はいつも通り、聞く必要も無い質問をした。
いさむ「いや、今日友達が東京から遊びに来てて、どうせおまえには話し相手もいないだろって、このチャットを教えてくれたんだ。」
 いさむの声は、ちょっと照れていた。
香織 「東京から?いさむ君は何処に住んでいるの?」
いさむ「沖縄だよ。」
< 22 / 96 >

この作品をシェア

pagetop