This is us



突然ワイシャツを掴まれて、仕方なく足を止めた。



「あたしと付き合って…」

額に汗が滲む。

真っ直ぐな、なつめの瞳。

時々車が通り過ぎて行く度に、生暖かい風が全身を包んだ。


「なつめ…」


「あたしの事好きじゃないのは、知ってる。でも側にいたいの…遊びでも何でもいい」


「なつめ!」


強く、なつめを睨んだ。

泣き出しそうななつめの顔が、胸を絞める。


「…好きなの。好きでしょうがないの…」


「俺は、遊びでもなつめとは付き合えない…」


それでも、ワイシャツを握る力は増していく。


俺にとってなつめは、小さい時から一緒に育ってきた兄妹みたいな存在で。


なつめには誰より幸せになってもらいたい。

俺みたいな奴じゃなく、しっかりとなつめを想って大切にしてくれる奴と。


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