This is us

Side Satori




髪を優しくさらっていく風が気持ち良かった。


金木犀の甘い香りに、頬を緩ませながら。


文化祭の準備で、近くの文房具店に買い出しに行くところだった。


なっちゃんと優花と三人並んで歩く。


さっきから無言なのは、コンビニで買ったアイスをそれぞれに頬張っているからだ。



もう十月か…。


見上げた空にはすじ雲が広がっていて、秋めいてきた空気を胸いっぱいに吸い込む。


結城くんとは話す機会もなく、時々どこかで女の子に囲まれている姿を見かけるだけだった。


遠い彼の存在に、胸がちくりと痛むけれど。


私なんかが相手にされることなんて、もうないんだって…


そう言い聞かせていた。


.
< 131 / 388 >

この作品をシェア

pagetop