This is us

「結城くん…」

「ん」


どのくらい経っただろうか。
シャーペンを走らせる音が止み、彼女の小さな声で我に返った。

暖房の程よい暖かさで少しうたた寝していたらしい。


「問い十まで出来たよ」

「よし、じゃあ答え合わせするか」

なんだ、ちゃんと解いてあるじゃん…

ルーズリーフをチラッと見ると、計算式でそこそこ埋まっていた。

俺は赤ペンを握って、自分のノートと照らし合わせてみる。

不思議な緊張感。

問題が正解している分だけ、キスをする約束だからだろう。

小田切もゴクンと唾を飲み込んで、じっと俺の手元を見ている。

「…正解数、一問…だな」

「やった!」

採点を終えて溜息を吐く俺の横で、ガッツポーズで喜ぶ彼女。

いや、おかしいだろ…。

「おい…一問だぞ。普通焦るか落ち込むだろ」

「むー…厳しい~」

その少ない脳ミソでよく頑張ったとでも言ってもらいたかったのか、シャーペンを弄んでいた手が脱力した。

コロコロとシャーペンがローテーブルを転がっていく。


「ったく…」


俯く小田切の頭をポンポンと撫でて、そのまま腕の中に抱き寄せた。


「…結城くん…」

「…てか、その呼び方辞めにしね?」


言ってて自分が恥ずかしい。
けれど、もっと距離を縮めたい。

「…じじゃあ、ななな何と呼べばい?」

「ふっ、噛みすぎ。蓮でいい」

「れ、れ…れ…」

一生懸命、俺の名前を言おうとしているけれど。

全く言えていないどころか、ただ"れ"を連呼しているだけに聞こえて。

愛しい気持ちが喉の奥まで込み上げてきた。


「…さとり」

「はっはい」

ガバッと顔を上げた彼女の顔は、茹で蛸みたいに真っ赤に染まっていて。


俺はゆっくりと顔を近付けて、そっと唇にキスをした。



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