This is us

少し前までの俺だったら、そんなこと大した事じゃないって思っていた。

ただ、行為に至るまでの過程であって。

こんなに胸が熱くなって、心がいっぱいになるなんて知らなかった。

小田切、いやさとりに出逢ってから

苦しくなったり、もどかしくなったり

他愛もない事が幸せだと感じたり

空っぽだった俺の心が、今彼女で溢れている。


退屈でつまらない日常が、変わったんだ。


「あ、そうだ…」


唇を離した後、照れ隠しをしたくて背中に隠していた袋を取り出した。

「…なになに?」

彼女はキョトンとした顔で小首を傾げる。

この日の為に、毎日バイトで金を貯めてきた。

生まれて初めてクリスマスプレゼントなんて、買ってみたりして。

先日佐々木に付き合ってもらい選んできたのだ。


「…ほら、俺バイトしてただろ?」

「うん」

「プレゼント…買う為だったんだ」

「…えっ?!」


しどろもどろになる俺の言葉に、彼女は瞳を真ん丸にして驚く。

「…そのせいで寂しい思いさせて悪かった」

そう言って中からピンクのラッピングされた箱を渡した。


「え…こここれ…わ私に?」

「当たり前だろ」

さとりは大切そうに箱を受け取り、信じられないとでも言いたそうに眺めている。

「…どうしよう…すごくすごく、嬉しい…」


そう言う彼女の瞳から、パタパタと涙が散った。


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