”ただ、愛されたかった…”
 「どうして?どうして、喜んでくれないの?

 普通母親だったら、30歳の娘の結婚話に、よかったね、とか、おめでとう、とか、 言ってくれるよね。 

 なんで、お母さんは、こうなの?

 何で、黙ってるの?

 勇太が、この前来た時、ニコニコして、話してたじゃない。

 結婚が、嫌なの?

 ねぇ、なんか、言ってよ」


 「…。」



 瑠理は、何も言ってくれない母親に苛立ち、そして、悲しかった。

 怒りを、通り過ぎ、心の中が、からっぽで、ただ、悲しい。


 喜んで欲しかった。結婚になかなか縁がなくて、やっと、その縁に出会い、誰よりも 、やっぱり母親に、祝福して欲しかった…。





 「どうだった?お母さん、なんて言ってた?ねぇ、瑠理、聞いてる?」

 瑠理の彼氏、勇太が、お好み焼きを作りながら、話かけた。

  
 「…。うん、聞いてるよ。反対では、ないと思う。でも、なんか、賛成って感じでも ないんだ。
 なんか、すっきりしない。でも、結婚するのは、私達だから、関係ないよ」

 少し、投げやりに瑠理は言って、勇太の方に歩いて行った。 

 
 「おかしいな、この前会った時、賛成って感じだったけどな。嫌われる事は、多分言 ってないし。
 俺、毒舌だから、自信ないけど」

 勇太は、ちょうど、お好み焼きを、ひっくり返しているところだった。 


 「勇太のせいじゃないよ。私のお母さん、少し他と、違うから。
 気にしないで。
 あっ、お好み焼き美味しそうだね」

 瑠理は、お好み焼きに、手をのばしていた。

 
 「瑠理は、待てないんだね、もう少し焼いた方がいいと思うよ。その方が美味しいお
 好み焼きが食べれますよ」




 瑠理と、勇太は、いつもこんな感じ。

 
 勇太は、物事一つ一つとても丁寧。

 一方瑠理は、せっかちで、とても丁寧とは、かけ離れたやり方をする。

 そんな二人が、一緒に暮らし始めて、ちょうど一年が、経っていた。 


 



































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