ゴシップ・ガーデン
胃がムカムカする。


こんなにショックを受けるなんて
自分でもびっくり。



なんで目撃なんて
しちゃったんだろう。

なんでこんなところで?!


まあ、ここは、地元なら、
出かけるならこの辺ってくらい
一番メジャーな駅なんだけど。


参考書の入った袋を持つ指に
ギュッと力を入れた。




あたしは逃げるように
その場をあとにした。


誰もあたしに気づきませんように。



電車に駆け込んだ。


閉まった扉にもたれ息をつく。




…ああ、どうしよう。

気づいてしまうなんて。


わかってしまった。



あたし、好きなんだわ。


ヒオカ先生のこと。




視界が涙でくもった。


可哀相なあたし。







家に帰ったら、
母はまだ帰ってなかった。


冷蔵庫には、
お酒の缶がたくさん入っている。


空き缶がすごくよくたまって
ゴミが増えた。


ここんとこ、ずっとそう。


よくお酒飲んで帰ってくるし、
家で飲まない日もない。


お酒ばっか飲んで
あんま食べないから母は痩せた。



何があったか知んないけど、
嫌なことあっても大人には
お酒があっていいな。


今夜も遅くなるんだろう。
誰とどこにいるんだろう。


わざわざ知りたくないけど。




早くここから出て行きたい。



だから勉強するんだ。




別のことに気持ちを
シフトしなければ、


やりきれなくて、
夜も眠れないから。


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