光輪学院シリーズ・依琉の微笑
しょぼん…と落ち込む祖父を通して、依琉は<視>てしまった。

今の神無月と良く似た面持ちの神羅に振られる祖父の姿を。

思い出の中の神羅は、今の神無月の髪を腰まで伸ばしているぐらいの違いで、ほとんど同じ姿形をしていた。

祖父からの視線なので、祖父の姿は<視>えないもの、昔の写真を見るとやはり依琉に良く似ていた。

「今の神無月と、良く似ているんですね」

「むっ! お前、<視>たな!」

「あっ、すみません。つい」

ヘラヘラと笑う孫を見て、祖父は深く息を吐いた。

「まっ、お前さんは力が強過ぎるから、『つい』もあるんだろうが、くれぐれも言動には気を付けることだ」

「分かっていますよ。コレ以上、敵を作るのは本望ではありませんし」

「依琉…」

依琉は思い出す。

ここにはいない、自分の家族のことを。

依琉の千里眼は、時折血筋の者に現れていた。

しかし神無月の実家のように、無料奉仕をすることはなく、私欲で使っていた。

その結果、依琉の家は実業家として成功していた。

神無月の家とは、同じような能力の受け継ぎ方だが、力の使い方について真逆な為、あまり仲は良くなかった。

それは周囲の態度も同じだった。

神無月達は救いを求める人々に、その力を揮う。

しかし依琉達は黙って私欲の為に使う為に、あまり良い印象を持たれていなかった。

特に能力を職業としてきた神無月と違い、依琉の家はあくまでも沈黙に意味がある。

それゆえに時折生まれる千里眼の持ち主は、家を継ぐ者として大切に扱われる反面、気味悪がれてもいた。

依琉の両親はお互いに血縁者だが、能力は全くと言って良いほど無かった。

なので依琉が能力を発揮した時、両親はソレを激しく拒絶した。

依琉の他に兄と姉、そして妹がいるものの、全員千里眼とは無縁だった。

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