亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


…何も答えないアルテミス。

だが、長老からローアンを守ろうとするその地中から伸びた根の壁は、一向に退く気配が無い。








アルテミスが。

神の木が、異端なる者を庇うなど。


そんな、馬鹿なことが。




敵に、味方するなど。












「―――…下らない口論は、もう終いにしたらどうだい…長老…」

アルテミスを見上げたまま、初めての動揺を見せる長老に、始終黙って見ていた神官が溜め息混じりに声を漏らした。

こちらにゆっくりと振り返る主の威圧的な視線から顔を背け、神官はローアンに微笑を向けた。

青く美しい瞳が、老いた千里眼に静かに視線を重ねた。


















「……残念だが、長老…貴方の負けだ。………なにせそこの王は、我等が神が、どうしても死なせたくないらしいからな」















意地悪く苦笑する神官の言葉に、長老はゆっくりと口を閉じた。

無意識に力が抜けた手から、剣が滑り落ちる。
巨大な剣はその大きさと重みから、盛大な音を響かせ、白い粉塵を撒き散らして積雪に横たわった。

アルテミスの守りの壁から一歩離れたローアンは、神官とアルテミスを見遣り、そして長老に視線を向けた。

当初からの威勢の良さは、少しも変わらない様で。
スカイブルーの瞳は水の様に澄んでいて。

ただそこには、運命に抗おうとする………愚かで馬鹿げた…しかし、自我を貫こうとする強い信念を秘めていて。















ああ、アルテミス、何故だ。



何故お前は、こんな小娘を好いている。





余所者嫌いなお前が、なぜそうまでして。

















………ああ、アルテミス。お前も運命に抗えと言うのか。
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