亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――…かかっ…たな……!」
鮮血を吐きながらも、ニヤリと微笑を浮かべるザイに、目の前に佇む男…ゼオスは顔をしかめた。
…その瞬間、ザイの握り締めていた弓が、刃に貫かれた部分から突然…枝分かれをし始めた。
長い弓の原形から一気にただの白い枝の絡まりへと豹変し、見る見る内にそれらは剣に、そしてゼオスの腕へと絡み付き、がら空きだった胴体にグルグルと巻き付いて締め上げてきた。
「……うっ…ううぅゥ…あアアあああ゛!!」
意志を持ったかの様に枝はギリギリとゼオスの皮膚を締め付ける。
身をよじって振り払おうとしたが、枝はザイの身体にも巻き付いており、二人を離れさせまいとしているかの様に、一向に解けない。
ザイの胸に突き刺さった剣も、枝が絡み付いて全く抜ける気配が無い。
その場から一歩も動けず、ただがむしゃらにもがくゼオスに……ザイは肩で息をしながら、呟いた。
呼吸が、上手く出来ない。
「………この…機を………待っ…ていた。………………………石、如きに…我々、人間が……弄ばれ、て…堪る、ものか……!」
低い呻き声を上げながら、ザイは胸に突き刺さった剣を空いている手で握り締め……更に深く、その身に沈めていった。
痛い、などという言葉では足りないくらいの痛みが、ザイを襲う。
目眩がする。耳鳴りがする。私もとうとう狂ったか。この身体ももうじき。
もうじき。
(―――さぁ………食え…)
さぁ、食え。
喰らえ。
思う存分に。
この、私の。
ザイロングの、命を。
ザイの身体から、青白い靄の様な、霧状のものが漂い始めたかと思うと、それはゼオスの手中にある…空の魔石へと吸い込まれていく。
物凄い勢いで、石は吸収していく。
同時に、石が放っていた黒々とした光は、次第に薄らいでいった。
辺りを覆っていた黒ずんだ霧も、少しずつ…晴れていく。