亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「…うん」

「………皆で………待ってるから」

「……うん」














ルウナは顔を埋めたまま、微笑を浮かべた。














「…………皆と…………………………父上と、待ってるから」






「………………うん」

















―――…毎日毎日…。



…ルウナは朝早く起きて、水の入ったジョウロを手に、城の裏手にある花畑へ向かう。



真っ白な花が咲き乱れる小さな花畑に足を踏み入れ、差し込む朝日を浴びながら水を撒く。



……小さな花を踏まない様に、その奥へと進み…。







………花に囲まれた、真っ白な真新しい墓石の前へと向かう。

















墓石に刻まれた名前を小さな指先でなぞり、何となく声に出してみて………首を傾げて、微笑を浮かべる。






今日は晴れ、だとか、暖かいだとか、母上に昨日怒られただとか………沈黙を守る墓石に向かって楽しそうに話すルウナ。





………会った事のない、見た事のない、自分の父。




………母上が大好きだった、今でも大好きな、僕の父。










………母上が好きなら、僕も大好きだ。






大好きな父上と一緒に、待ってるから。














「………ルウナ、私は弱くはない。母を、誰だと思っているんだ…?」




苦笑混じりの母の囁きに、当然とばかりに………。



母上が誰かって…?

母上は、女王様で…強い強い戦士で……。


母上は……。

母上はね………。



















「―――母上は、僕の母上だよ……」
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