亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
その空に、雲など一つも無い。
遮るものなど無い中で、自由気ままに姿を曝し、己が力を誇るかの様に眩しい光を降り注ぐ金色の太陽。
煮えたぎった空気はユラユラと揺れ動き、幾つもの蜃気楼を生み出していた。
遠い何処かの土地の風景が、この赤い大地にぼんやりと浮かぶ。
吹き荒れる風にまかれて、大地は少しずつ姿を変えていく。
………赤い砂漠の大地は、遥か彼方まで………地平線の向こうまで、気が遠くなるほど永遠に続いていた。
道など、何処にも無い。
無造作に転がる岩や大昔の建築物の一部、半分が粉塵と化した大きな何かの骨、いつ死んだか分からない汚れた人骨………。
赤という単色の砂漠には、明暗のコントラストとそんなものでしか飾られていない……随分と殺風景な世界。
ジリジリと照りつく手加減というものを知らない日差しは、殺人的な暑さと眩しさを生み、そして……死を招く。
―――その真っ赤な大地に………雲などある筈も無いのに、大きな影が一つ………物凄い速さで走っていく。
………鳥に似た形の影だけが、砂漠を駆け抜けていく。
通り過ぎた場所は突風が起こり、温度を増していた。
………その、遥か上空。
暑い熱風をものともせず、それは羽ばたいていた。
日に照らされた大きな嘴が開き、奇怪な鳴き声をあげ………炎を纏った翼は、揺れる空気を撫でていく。