亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
生暖かい血液が皮膚から溢れ、衣服にジワリと滲んで赤く染め上げていく。
肩を押さえていた手の平を広げて見れば………赤。赤。赤。
指紋の僅かな溝に染み込み、鮮烈な赤を刻んでいく己の血。
………痛い。
………痛い。
何もかも、痛い。
乱れた髪が絡み付く手を凝視しながら、ユノはその場で立ち上がった。
震える足に鞭を入れ、わななく唇をギュッと噛み締める。
………男が歩み寄ってくる気配と足音が、すぐ後ろから感じられた。
………痛い。
………痛い。
痛い…痛い…痛い痛い痛い痛い。
(………どうして…?)
…依存し続ける頭痛と肩の鈍い痛み。言い知れぬ恐怖と震える身体。
………何故だ。
………何故、こんなにも……痛いのだろう。
………痛い思いをしなければならないのだろう。
………どうして………死ななければならないのだ。
………チクチクと痛みだした二つの眼球。
血で汚れた冷たい手で両目を覆い、ユノは苦しげな呼吸を繰り返した。
僕は、王にならなければならないのに。
どうして僕を殺そうとするの。
僕は…死ななければならないの。
どうして僕が。
どうして。
どうして痛いのだろう。
僕は………。
どうして。
どうして。
「………どう…して………」