亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
それで貴方が帰ってきてくれるなら。
あたしね。
「―――……何だって…してやるっ…!!」
真っ白に濁った雪空に向かって、石を高々と投げた。
黒い石は真っ白な景色の中でぽつんと孤立していて、よく映えていて。
クルクルと回転しながら、重力に従って再びドールの元に落ちていく。
……落ちてくる。
全てを終わらせてくれる、小さな頼りの石が。
徐々に落下速度を上げて上空から戻ってくる石を見上げながら……ドールは、鎚を握り締め。
「―――…ごめんなさいっ…」
………恨みなんて無い。無いけれど。
………死んでちょうだい。
…無意識に出た、誰にも聞こえない小さな言葉。
湧き起こる色んな感情を全部殺したドールの目は、ただ冷酷で、無慈悲で………氷の様だった。
………直後、ドールの巨大な鎚は、何も無い空間を大きく真横に割っていた。
鎚の先の鉄塊が撫でた空間は突如グニャリと歪み、見えない衝撃波となって………弾丸の様に、空を切り裂いた。
………黒い石を包み込み。
……吹雪を掻き分けて、前方へ。
前へ、前へ、真っ直ぐ。一直線に。
氷の砦に籠る、一人の人間目掛けて。
吸い寄せられる様に。
(―――!?)
凝縮された凄まじい衝撃波が、目にも止まらぬ速さで背後からレトのすぐ脇を通り抜けていった。
…その様はまるで、見えない矢。