亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
1.雪国の狩人








ここは、静か。






私以外、誰もいない。

何もいない。




あるのは空気と、静寂と、凍て付く寒さと、光と闇と………。



ここに居座る私だけ。



もうどれ位ここにいるのだろうか。


どれ位生きているのか。


指を折って数えても……指が足りない。

それ以前に、もう忘れてしまった。



朝も昼も夜も。

埃一つ無い冷たい床をヒタヒタと歩いて、ウロウロして、ちょっと座ってみたりして、腕を回してみたりして。








長過ぎる髪を指先で弄って。

天井から伸びている長過ぎる氷柱の先に舌を這わせて。

分厚い氷の窓から吹雪きを眺めて。

昔教えてもらった、懐かしい歌を口ずさんでみて。













する事なんて、何も無い。

暇だ。

暇過ぎる。

いたずらに時間を潰すのにも飽きてしまった。


限られた範囲を歩き回って結局辿り着くのは………。




あそこに見える……青い、冷たい………誰もいない玉座。

遠い昔は、あそこに誰かが腰掛けていた。



でも今はいない。





あれを見守るのも、今は私だけ。



眠い時や暇な時は、あの玉座に寄り掛かってぼうっとする。




神々しい玉座にこうやって触れて、寄り掛かって目を瞑るのは、私だけ。





軽い優越感。









でも、少し寂しい。



寂しい、寂しい、独りだけの優越感。













誰のものでもない、私だけの。




















―――孤独の中の、優越感。

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