亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
11.『第三』の老婆











元は、頭の切れる優れた御方のバリアン王。


きちんとしていればそれなりに長い髭の似合う威厳高い御方なのですが。


そう都合よくいかないのが、陛下であり、陛下の可愛らしい所でもあると私は胸を張って言えます。


ええ、そうです。
陛下は一度突っ突けば癇癪を起こし、ちょっと悪口を言えば塞ぎ込んでしまう、扱いやすくて愚かでもう笑ってしまうくらい面白い方で御座います。


恐れながら、その様に断言させていただいている(許可はおりておりません)私は、敬愛する陛下にお仕え致しております、しがない側近のケインツェルという者に御座います。はい。


この城に入ってから一体どれくらいの歳月が経っているのやら。



ああ、失敬!忘れました。



この皆様の嫌われ者のケインツェル、嫌われていると分かっていながら自分でも驚く程ポジティブに生きております。

嫌いなものは一つだけですが、好きなものはたくさん御座います。

子供も大人もご老人も。

虫も犬も猫もバジリスクも砂食いも。

天使も悪魔も神様も。

血も肉も骨も死体も蛆も。

窃盗も強姦も殺人も戦争も。

皆大好きですよ。
全てのものが、私にとっては眼福でしかないのです。

この目に映るもの全てが、私を楽しませてくれるのでしたらねぇ。


こんな風ですから嫌われるのでしょうか。アッハッハッハッハッハッハ!!光栄ですよ!!
皆様からのその白い目、ゾクゾクします。


おや、引かないで下さいよ。可愛らしいですねぇ!










嫌いなもの?
フフッ、私の弱みでも握りたいのですか?

嫌いなもの、それはですねぇ。

















退屈、です。
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