ツインの絆

「確かにどこの学校へ移っても、
しばらくは興味の目にさらされるかも知れない。
それは転校生の定めだ。

だけどこの数日の新聞を見ても、
ヘロインの事件としては載っているけど、
どこにも野崎の名前は出ていない。
勿論孝輔の名前だって… 

ただ… あのアキと言う女との事は… 
大輔の友達が見たのだから、
他にも見ていた人がいても不思議ではないよね。

そうでなくても転校生は興味の目で見られる。
それは孝輔が強い心で克服するしかない。」



今までは何かあれば大輔がいた。

だけどこれからはそうは行かない。


大輔がいない生活を思うだけで、
心細くて気が変になりそうな自分に気付き、
改めていかに大輔の存在が大きかったか思い知らされている。


こんな思いをするならいっそ… 
そんな事まで頭に浮かんだ。



「広志さん、もう少し考えさせてください。
僕… 今は何も考えられません。
僕… 皆に心配をかけて… すみません。」



それだけ言うのがやっとの孝輔だ。



「そんな事はないよ。
こうして孝輔が無事だった事で皆安堵しているのだよ。
だけどハードの部分は何とかなっても、
ソフトの部分は孝輔の精神力で打ち勝たないとしようが無い。

これからの事は孝輔の気持次第だ。
今日はこの話は止めよう。
孝輔がこれからどうしたいのかは二・三日考えてから話し合おうね。
その間に僕はいくつかの学校をリストアップしておくから。」



そう言いながら広志はきれいな表紙のデザイン帳を持って来た。


まさに気分転換の勧めだ。



「僕の作品だよ。見る。」



そう言いながら広志はそれを孝輔の前に広げた。

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