ツインの絆
「本当か。大体河村アキが何故孝輔と、という疑問は初めからあったが… 畜生。
真理ちゃんへの腹いせに孝輔にヘロインなんて,卑怯な奴だ。」
そこまで話していた時に父の帰宅が感じられ、
あと数分で風呂から出た父を待つ形で夕食になる。
大輔も孝輔も、真理子のことでかなり心痛を感じているのに、
毎日仕事に出ている父に,これ以上心配はかけたくなかった。
それで、話し始めの頃と比べるといくらか生気が戻っている孝輔に、
二階にある洗面で顔を洗って来るように言い、
何も無かったように振る舞い、普通の話だけをするように指示した。
この続きは後でまた考えようという事だ。
顔色の悪さは隠しようも無いが…
ちょっと疲れているようだ、と言う事で通す事にした。
案の定、父は姿を見せない真理子を案じているのか、孝輔の変化は口にしなかった。
真理子のことがあるまではそれなりに会話のある食卓だったが、
最近は重苦しい空気が流れている。
春子は自分と真理子の分をお盆に載せて、
真理子の部屋へと運んでいるからそれだけでも淋しい感じがする。
「孝輔、たまにはバイオリンを聴かせておくれよ。」
曾祖母の朝子が、その場の空気を和ませるような言葉を出した。
ちょっと足が弱っているが、それ以外はいたって元気な85歳だ。
「ばあちゃん、孝輔の顔をよく見ろよ。
こいつはしばらく学校を休んでいたから、
名古屋まで通い,勉強して戻るという事に体が慣れていないから,疲れが出ている。
顔色が悪い。バイオリンはお預けだ.
その内に弾いてくれるさ。なあ、孝輔。」
大輔が言おうとしていた言葉を孝太が先に出した。
父は気付いていた…
二人は父の言葉に驚き、顔を見合わせている。