『一滴』の雫



ジリリリリリリリリーン…ッ。


「うるさい…」




「咲奈!」


聞き覚えのある声がする。


「…楊?」



「…咲奈お前顔やばい。」


「なっ!!

てか人の部屋入ってくんな!

出てけ−!」



「起こしに来てやったのに
なんだよ!アホ咲!」




現在、中1。



あれからもう1年がたった。


早いものだ。


最初、あたしは“楊くん”と呼んでいたのだが、『家族って感じがしない』という理由で呼び捨てになった。




外は雪。



あのときもこんな風に雪が降ってたなぁ、なんて思い出したりする。



あたしは洗面所に行き、顔を洗った。




「おはよう、咲」



「おはよう咲ちゃん」



「おはよう、お母さん、薫さん」




“薫さん”は今もまだ健在だ。



「おい咲。
お前ご飯食べてる暇なんて

あんのかよ?」



時計を見る。


「…え?8時3分!?」



「ご飯食べてる暇なんてねーだろ。さっさと着替えろ」




「うん!楊、待っててよ!」




「ああ…うん」
< 3 / 12 >

この作品をシェア

pagetop