『一滴』の雫


「楊さぁ、彼女出来た?」




「いや。なんで?」



「理由なんてないよー。ただ、いるのかなって思って」



ウソだ。


ほんとは聞きたくて聞きたくてしょうがなかった。




楊の好きな人の話もしたことがない。



…怖い、から。



「…お前は?」



少し間をあけて、まっすぐ前を見ながら楊が言った。



「彼氏?できるわけないじゃん!」




すると楊はバカにするようにフッと笑って、



「だよな。咲に出来たら俺にも余裕で出来てる」



「はあ!?」


楊は笑った。






「おはよッお二人さん!」



「沙緒ちゃん!おはよー!」



「今日も二人で登校ですか?熱いねぇ…」




「沙緒ちゃん!」



自分でもわかるくらい顔が熱くなっていく。



「アホか。先行ってるぞー」



「あ、うん!」




ポーッと後ろ姿を見つめていると、沙緒ちゃんが



「いい感じじゃないっ」




と言って、背中を軽くポンッと叩かれた。
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