君に幸せの唄を奏でよう。
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「ここを曲がればいいのね?」
「ああ。で、突き当たりを右に曲がれば着く」
放課後、あたしは橘 奏に電話で道案内をしてもらい家に向かう。
「着いたわ。何階に住んでいるの?」
「3階の303号だ。下に降りていこうか?」
橘 奏が、気を遣ってくれてるのが分かる。
「大丈夫。じゃあ、今から行くわね」
「ああ。じゃあ」
あたしは電話を切った。
…ヤバっ!超緊張した…!
初めて、橘 奏と電話したから緊張してしまった。
あたしが怪我をさせてしまったのに、橘 奏はあたしに気を遣ってくれた。
やっぱ、優しいな……。そう思うと、胸がキュンとなった。
-て、なんで胸キュンになってるのよ!今日はお見舞いに来たんだから!気を引き締め、階段で3階まで一気に上って行く。
あった…。
303号室を見つけ立ち止まる。
今度は、心臓がドクンドクンと大きく脈を打つ。
自分を落ち着かせるために深呼吸をする。そして、インターホンのチャイムを鳴らそうと人差し指を伸ばす。
「あら。どちら様?」
あたしが、上がってきた反対側の通路から声が聞こえた。声のする方に振り向くと、女の人が居た。
髪は、あたしと同じセミロング。髪の色は、真っ黒でとても綺麗。それに若い。
…ん?さっき、どちら様って…?
「もしかして…橘くんのお母さんですか?」
あたしは、女性に恐る恐る尋ねる。
「ええ…。何故、貴方が?」
橘 奏のお母さんは、不思議そうな表情で聞いてくる。
「…橘さんが怪我をしたのは、あたしのせいなんです。ごめんなさい。それで、今日お見舞いに来ました」
「え…」
橘 奏のお母さんは、驚いていた。
「貴方が…。奏から聞いてるわ。中で話をしましょう。どうぞ入って」
「お邪魔します……」
あたしは覚悟を決め、玄関に足を踏み入れた。