君に幸せの唄を奏でよう。
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「なるほど。そういう訳か……」
「はい…」
あたしは、草野さんに全て話した。
「でも、最初は本当にびっくりしました。いきなりあんなこと言われるなんて」
「…だけど、あいつの事を悪く思わないでほしいんだ」
「え…?」
突然、草野さんは真剣な表情になる。
「…実は、俺も橘のこと詳しく知らないんだ。
橘は、あんまり自分のことを話さないからな」
「そうなんですか?」
草野さんも知らないと聞き、少し驚いた。
「そうなんだ。でも、これだけは言っていた」
「なんて言ってたんですか?」
あたしは、草野さんに尋ねた。
「…でも、これを聞いたら唄ちゃんは後悔するかもしれない。それでも聞きたい?」
草野さんの言いたい事が、何となく分かった。
きっと、この話を聞けば、あたしが絶対に傷つくって事が。
それでも、あたしは…
「…聞きたいです」
この機会を逃したら、橘 奏のことが、このまま分からないままになる…。
だから、知りたい…橘 奏のことをちゃんと知っておきたい。
「…そうか。橘は言ってたんだ。“歌が憎い”って」
ドクンッ---!
「え…?」
どういうこと?だって、橘 奏は“歌が嫌い”って言ってたじゃない…。
「あ、あの…他には?」
「…聞いてない。橘は、ただそう言ってた」
そっか。そういう事だったんだ…。
「…草野さん、もう家が近いので、ここで大丈夫です。ありがとうございます。それと、話してくれてありがとうございました。失礼します」
あたしは、走って帰った。
「唄ちゃん?!」
ごめんなさい。でも、今は1人になりたいの。
草野さんが、あたしを呼んでたけど、振り向けなかった。