君に幸せの唄を奏でよう。
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「クスッ」
昔の事を思い出して、思わず笑ってしまう。あの頃の音夜は、可愛かったな~。今は、超生意気になってるけど。
だけど、今になっても分からない事がある。お母さんが言ってた《悲しい思い出》。
あれは、なんだったんだろ…。
半分まで沈んだ真っ赤な夕日を見つめていると、なんだか悲しい気分になってきた。
ダメダメ!ここは、あたしとお母さんと音夜の楽しい思い出の場所。ここで、悲しい気持ちになってどうするのよ!
しっかりしなくちゃ!と頬を叩く。
さて…歌いますか。
お母さんが病死してから5年経ち、あたしはいつもここで歌っている。
ここに来れば、天国にいるお母さんに歌を聞いてもらえる様な気がしてしまう。
川の近くに行き、自分が考えてきた歌をうたった。
【My heart】
あなたに伝えたい
言葉にならない気持ちを
どうやったら
あなたに伝わるだろう
考えても 考えても
わからない
いつか誰かが言っていた
言葉を思いだし動きだす
あなたに向かって
ジャリッ。
歌っている途中、誰かが砂利を踏み歌が遮られた。音のする方に振り向くと、そこには男の人が居た。
背はすらっとしていて、あの背の高い亮太を超えている。髪は黒髪の短髪。顔は、鼻筋が通っていて整った顔。
さっきまで河原には、誰もいなかったはず。
ふと土手を見ると、自転車が止まっていた。この人は、偶然にもここを通り、自転車から降りて土手から下りて来たんだと納得する。