君に幸せの唄を奏でよう。
「……もういいわよ。聞いたあたしがバカだったッ!」
痺れを切らした女は、呆れながら怒った。
「けど、これだけは言っておくわッ」
女は、指を俺に指しながら言う。
「歌はね、知らない誰かを幸せにできる魔法なのよ!」
女は強い意思を持った瞳で、真っ直ぐ俺を見つめる。
知ラナイ誰カヲ、幸セニデキル魔法---?
女の言葉に、俺の中で黒い感情が渦巻く。
「……歌が、知らない誰かを幸せにできる魔法だと……?ハハハハッ!!」
俺は笑った。
もし、それが本当なら“あんな思い”をしなかった――。
この女が、腹立たしいぐらいに清々しく見えてきた。
「幸せの魔法ねぇ……。その歳で、まだ信じてるわけ?」
俺は、歌を否定するように睨みつけながら言う。 女は、泣き出しそうな表情をして下にうつ向く。
「……て…悪い…のよ」
「?」
女がボソボソっと何かを言うが聞き取れない。言葉を聞き取る為に、前に一歩踏み出した途端――。
「信じてなにが悪いのよ!!」
女が、突然叫びだした。その光景に、ビックリして唖然とする。
「あたしの歌を聴いて幸せになってくれる人がいるッ!!」
何処までも真っ直ぐな女の言葉に、心がズキズキとする。
「それを、あんたにどうこう言われる筋合いはないわッ!!」
女は、大声を出し過ぎたらしく肩で大きく呼吸をしていた。