君に幸せの唄を奏でよう。
「……そうだな」
俺がそう言うと、女は驚いた表情をする。
何やってんだ、俺……。今までの自分が段々情けなくなった。
そのせいか、俺の中にいる“弱い自分”が、俺の意思を無視して勝手に口を動かす。
「だけど、歌が好きな奴もいれば……大ッ嫌いな奴もいるんだ」
「………」
俺は情けなくなった。女は、何も言い返さず黙って俺を見つめる。
「……じゃあな、邪魔したな」
俺はそう言い残して、この場を立ち去った。いや、早く立ち去りたかった。
土手に停めていたチャリに、乗り家へと向かう。
しばらくしてから、女が何かを叫んでいるのが聞こえたが振り返らなかった。
――――
―――――――
「…い…おい、奏!」
突然、俺を呼ぶ声が聞こえてきて、ハッと我にかえる。顔を上げれば、心配そうに見つめる宮木が居た。
辺りを見渡すと、講義が終わったみたいで俺たち以外誰も居ない。
「なんかあったのか?顔色が変だぞ?」
宮木は、心配そうな表情で俺に尋ねる。
「いや、バイトのし過ぎで寝不足なだけだ。心配かけて悪かった」
俺は嘘をつく。まさか、昨日の出来事のせいだと言えなかった。
「あんま無理すんなよ」
「ああ……」
宮木は、俺の嘘を素直に信じた。少し罪悪感を感じる。
「宮木、自販機行こうぜ」
俺は、話しを変えるために言った。俺達は、自販機に向かう。