ブラックホール
壁の穴
冬子の金切り声が聞こえる。続いて「バコッ」っと鈍い音。

僕は浅い眠りから覚醒し、壁に開いた穴に目をやった。

ぽっかりと開いた黒い穴から冬子の甲高い笑い声が僕の部屋へと響く。

「この穴、どうするつもり?」

穴に向かって問いかける。

彼女にこんな野暮な質問をしたところで無駄なのだろうけれど…

常識人な聖也には壁に穴が開いてしまったという重大問題を黙って受け流すことが出来なかった。

案の定、引き笑いの間に聞こえた冬子の返答は

「気にすることないわ」

という聖也の求めた類のものではなかった。
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