Melted Love 〜溶ける愛〜
仕事でアメリカに赴任していたケイが1年ぶりに戻って来たマンションは、以前と変わらず洗練された部屋のままだった。
『エリカ、何か飲むか?』
「じゃあ…ジーマある?」
キンキンに冷えたジーマに、果物ナイフで櫛形に切ったライムを挿すと、手慣れた手つきで差し出して来る。
『どうぞ。』
「ありがとう。随分用意がいいのね?」
1年ぶりに帰って来たというのに、アメリカに旅立つ前と変わらない用意の良さに、私よりこの部屋を良く把握している人が居るんじゃないかと勘繰りたくなる。
『飲み物は弟に言って昨日買って来させたんだ。』
弟というワードにホッと胸を撫で下ろしつつ、今でもケイの言うことを従順に聞く弟のタクミに感心する。
「相変わらず横暴なお兄ちゃんね。」
『今更だろう?』
そう言って苦笑するケイの顔を見ると、あぁ本当に1年ぶりに再会したんだと、実感が湧いて来る。