先生の秘密


「ウフフ、貴女達は昔からそう。お人よしで優しいのに、誰にも理解されないと心の悲鳴に気づかずに、暴れ回っていたのよね」


「シスター!」


楓さんが慌ててシスターの口を封じにかかる。


そんなに知られたくない内容なのだろうか。


「もう!ふーちゃんもいるのに!」


椿さんは、ぷくりと頬を膨らませて、顔を赤く染めている。


「でも、シスターに会いたかったっていうのは、本当だよ?」


「嬉しいことを言ってくれるわねぇ。ありがとう」


シスターは柔らかい笑顔を浮かべて、双子に歩み寄る。


「それは、私達が言いたかったの。ありがとうって」


「そう…」


一瞬、寂しそうな表情に気づいたのは、子供達だけのようだった。


シスターは、全国津々浦々、困った人がいればすぐに向かう人だ。


そんな人だから、一期一会なんて当たり前なのだろう。


実際に感謝されたのなんて、何度あるんだろう。


私も、聖やはつかも、シスターがどこで何をしているのか分からない。


霞さんすら、知らないのだ。


感謝されることもあれば、後悔することも、憎まれることもあるのだろう。
シスターだって人間だ。


ちらりと、先生を盗み見る。


正直ずっと、迷っていた。


本当は、言わなくても先生は何も聞かないのだと思う。


どうして、この教会にいたのか。


どうして、孤児院にいるのか。


聞きたくても、聞かない。
私が話すまで、きっと待っていてくれる。

いや、言わなくても、先生は怒らない。


ずっと秘密にしておくことだってできる。


先生は、そんな人だ。



でも、言わなくちゃいけない。


何となく、先生には言っておいた方がいいと思った。



< 102 / 131 >

この作品をシェア

pagetop