先生の秘密


私の姿を見つけるなり優しげな表情を向けてくるこの人こそ、崎浜高校理事長、常陸園霞――ひたちえんかすみ、である。


常陸園グループの総帥、常陸園鷹将――ひたちえんたかまさ、の次男坊で能力人望共に長男の剣――つるぎ、より優れているとされるが、彼には如何せん問題があった。


「ちょっと待っててね、すぐに晩ご飯できるから」


霞は理事長と呼ぶにはまだ若く、20代半ばほどだ。


容姿は申し分ないくらいの美形で、その辺のモデルが裸足で逃げ出すほどのスタイル。


しかし、彼の羽織るエプロンは、目が痛くなるようなピンクに、レースをふんだんにあしらった可愛らしい乙女ちっくな代物だった。


間違っても20代男子が着られるような物ではない。


残念なことに、とっても残念なことに!


彼は、所謂オカマというやつなのだった。


「お、お気遣いなく~…」


鼻歌でもうたいそうなほどご機嫌な様子で、内股でキッチンへと駆けていく霞を見て何とも複雑な気持ちになる。


もうとっくに慣れてしまったけど、あんなに楽しそうな彼を見るのは本当に久しぶりだ。



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