先生の秘密
「霞様、そろそろお時間です。鷹将様と操お嬢様をこれ以上お待たせできません」
霞さんの背後から口を出してきたのは、霞さんの秘書、伊勢崎憂哉(イセザキユウヤ)さんだ。
しわ一つないダークスーツをびしりと着こなし、正しく完璧な大人の男といった雰囲気だ。
立ち姿もさることながら、真っ先に思い浮かべるのは執事だろう。
まぁ、見た目はともかくとして、あんな自由人な霞さん相手じゃあ、何となくもったいない気がしないでもない。
「えー、もうそんな時間?」
伊勢崎さんの方を振り返りながら、不満そうに眉を寄せる霞さん。
伊勢崎さん相手には、霞さんの対応もなんだか厳しい。
昔からの親友だったらしいから、そこのところは気の許せる同士ということなのかもしれないけど。
「今日は、様子見だとおっしゃったじゃないですか」
「当然でしょ。ったく、剣が行けば私がわざわざ行ってやる必要もないのに」
不機嫌そうに唇を尖らせる霞さんの雰囲気がどんどん険悪な物になっていく。
シスターはいつの間にか、霞さんから子供達を引きはがし、隅の方に避難させていた。
さすがだ。
伊勢崎さんは、そんな霞さんにも顔色一つ変えず、淡々と説得している。