先生の秘密
「はぁ、分かってるよ。伊勢崎だって、聖と一緒にいたいわよね」
霞さんがそう言いながら聖をちらりと見遣る。
今まで表情を変えなかった伊勢崎さんの眉がぴくりと一瞬だけ上がった。
私も同じように聖に視線を向けると、少し怪訝そうな顔で首を傾げていた。
伊勢崎さんのアピールは毎度誰が見ても一目瞭然なのに、本人はただ過保護なだけなのだと思い込んでいるのだから不思議だ。
聖は周りの機敏に聡いから、自分に向けられているのもどういう感情なのか分かった上で、利用することが多い。
悪い子じゃないんだけど、悪女だとか女王様だとか言われる由縁はそこにある。
でも何故か伊勢崎さん相手にはそうはいかない。
多分、聖自身が気づいていない内に、惹かれているからなんだと思うけど、本当のところよく分からない。
「霞様、」
「はいはい。それじゃあシスター、子供達のことよろしくね」
「言われなくとも、子供達は天使ですから」
シスターらしい言葉を聞いて、霞さんは満足そうに頷いた。