先生の秘密
「青葉ちゃん、顔が怖いよ?」
最年長の10歳の少女、クルリちゃんが私の顔を覗き込みながら、からかい混じりでそう言った。
我ながら酷い顔だろうなぁ、と思っていたけど、他人から言われるとちょっとへこむ。
「青葉の顔が気持ち悪いのなんて、いつものことじゃない」
「誰もそこまで言ってないからね!」
聖の毒舌につい突っ込む。
にこり、と笑うクルリちゃんにつられて微笑むと、シスターのピアノが響く。
ピアノの音に合わせて、歌う。
この瞬間が、もっとも解放され、気持ちいいのだ。
歌は基本的に何でも好きだけど、この聖歌はまた別だ。
好き、だけど、それだけじゃない。
私にとって、特別な歌だ。
きぃ、と控えめな扉を開ける音に気づいて、そちらにちらりと視線を向ける。
「―――…!」
えっ!?何でここに!?
向こうも、私の姿に驚いたようで、間抜け顔で口を開けている。
はつかに至っては、身を乗り出すようにして驚いている。
聖は、さすがというか、気づいてはいるのだろう、一瞥するとすぐに何食わぬ顔で歌う。