先生の秘密


霞さん達が帰った後、何となく釈然としない表情を浮かべる聖に、賛美歌の歌詞を渡す。


といっても、私も聖もはつかも、歌詞なんて見なくても歌えるのだけど。


シスターのピアノの音に合わせて子供達が歌い出す。


私達は、本番に歌うだけだから、それまで待機だ。


本当に、歌声はまるで天使のようだ。


小さい頃から聞き慣れたシスターのピアノの音。


美しい音色。


目を閉じて、感じる。


まるで、夢に旅立つような、綺麗な世界。


私のような汚い人間には、もったいないと思えてしまう。


「青葉」


ギュッと華奢な指が私の手を握る。


両脇に座る聖とはつかの手の温もりに泣きそうになる。


汚くなんか、ない。


私達は人間なんだ、と。


そう、認めてくれているようで。


いつの間にか、私達は子供達と一緒に、口ずさんでいた。





本番、教会には何人かの老人や子供が椅子に座って、こちらを見ている。


もう何度も参加しているのに、今だこの緊張感には慣れない。



< 88 / 131 >

この作品をシェア

pagetop