先生の秘密
霞さん達が帰った後、何となく釈然としない表情を浮かべる聖に、賛美歌の歌詞を渡す。
といっても、私も聖もはつかも、歌詞なんて見なくても歌えるのだけど。
シスターのピアノの音に合わせて子供達が歌い出す。
私達は、本番に歌うだけだから、それまで待機だ。
本当に、歌声はまるで天使のようだ。
小さい頃から聞き慣れたシスターのピアノの音。
美しい音色。
目を閉じて、感じる。
まるで、夢に旅立つような、綺麗な世界。
私のような汚い人間には、もったいないと思えてしまう。
「青葉」
ギュッと華奢な指が私の手を握る。
両脇に座る聖とはつかの手の温もりに泣きそうになる。
汚くなんか、ない。
私達は人間なんだ、と。
そう、認めてくれているようで。
いつの間にか、私達は子供達と一緒に、口ずさんでいた。
本番、教会には何人かの老人や子供が椅子に座って、こちらを見ている。
もう何度も参加しているのに、今だこの緊張感には慣れない。