純情乙女の昼下がり
そんな私の邪悪なオーラを感じたのか、佐々岡さんは突然振り返った。

「なに」

「べべべ別に…っ」

不自然すぎた私を怪訝そうな表情で一瞥してから、佐々岡さんはまた前を向いた。


(歳の近い男の人って、何を考えているのかよく解らないから、苦手だな。)

自分のコミュニケーション力不足が身にしみる。

(話してみたら本当はいい人かもしれないのに。頭から否定しちゃって、私って性格悪いなあ。)

得意のマイナス思考のまま、私は自席へと戻った。佐々岡さんの近くにいたら、邪魔になりそうだし。

先ほど電話をかけた、コールセンターの受付女性の対応を思い出す。
多少作っているのかも知れないけれど、好印象を与えそうな声だった。

(明るくて華やかな感じの人なら、佐々岡さんともうまくコミュニケーションとれるのかな)

苦手だ嫌いだと思ってはいたけれど、彼をそういう風に感じてしまう原因を作ったのは、私自身なのかもしれない。

気分が落ち込んだまま、私は自分の仕事を再開した。
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