純情乙女の昼下がり
「ちょっと」

ぼーっと立っていたら、不意に声をかけられた。

「なんでしょうか」

「そこのドライバー取って。手が離せない」

(何で私が手伝わなきゃならないの!)

心の中で毒づきながら、私は足下にあった工具入れからドライバーを取り出し、渡した。

「サンキュ」

一瞬こっちを見ると、またすぐ作業に戻った。普段は誰も触らないような所をこじ開けている。

なんかさー。
もっと愛想ってものがあってもよくない?
元は割といいんだから、ニコニコしたらモテそうなのに。

って…あれ?
『元は割と』だなんて、私ったら何考えてるの!
この人がモテようがモテまいが、私には全く関係のないことだってば。
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