魔女の報酬2 ~果ての森編~
 魔法院の院長ラムルダが姿を現す。

「ラムルダ……?」

 終わったの? と問いかけようとして、メディアは言葉を飲み込む。様子が変だ。

 ラムルダは問いかけに応えようともせず、二人に向けられた紫の瞳は怒りに満ちていた。ぎっと二人を睨み据える。

 いつもは穏やかなだけに、打って変わった彼の様子には迫力がある。
 メディアとミレド2世は思わず手を取り合って、その場に凍りつく。

 ラムルダはしばらく無言のまま彼らを目線だけで威圧すると、ようやく口を開いた。

「お静かに願います」

 彼はそれだけをいうと、室内に姿を消す。扉を閉める音がやけに大きく響いた。
 二人は手を取り合ったままの体勢でラムルダの消えた扉を見送り、ややしてふたり同時に大きなため息をついた。二人して、息を詰めていたらしい。

「怒らすと怖いのだな」

 感心するように王が言う。

「忘れていたわ。ラムルダって、難しい魔法を使うとき、側で邪魔されると、キレるんだった」

「なるほど。では、静かにしておかねばなるまい」

「そうね」

「ところで、メディア殿」

 王は明るい青い瞳を悪戯っぽく輝かせた。

「何よ?」

 思わず警戒のまなざしを向けるメディア。この王様は意表を突くことにかけては、その息子以上だ。

「そろそろ手を解放してくれないか。役得だとは思うのだが、後であれに知れると怖い」

「うっ」

 思わず大きな声を上げてしまいそうになるのを必死でこらえて、飛び離れるメディアだった。 
< 35 / 39 >

この作品をシェア

pagetop